黒田恭一氏のこと(その2)
「今日は20日だ」とわかっていても、土曜日は、仕事の終了が9時過ぎで、
最寄りの駅についたのが10時半ごろだった。
近くの書店は閉店している。
途中下車すれば、まだ開いているところはあったのだが、食事もまだだったため、そういう気も起きなかったが、
この日は、モーストリークラシックの8月号の発売日だった。
モーストリークラシックの巻頭は、黒田先生の「黒恭の感動道場」だった。
今年の分は、6月号と7月号の掲載だけだった。
もしかしたら、と思い、今日書店で手にしたが、やはり載っていなかった。
おそらくモーストリークラシックの7月号掲載分が、黒田先生の最後の文章となるのか。
黒田先生の文章は、おだやかでやさしい口調で語られていることが多い。
だから、文章だけで黒田先生に接してきた人は、モーストリークラシック6月号と7月号の文章に、
それまでの黒田先生のイメージとは違うものを感じとられた人も少なくないかもしれない。
黒田先生の音楽への愛情は真剣だった。
それだけに、愛を感じられない、やっつけ仕事でなされた演奏やレコードに対しては、
ひじょうに辛辣できびしい言葉で語られることもあった。