Date: 12月 18th, 2011
Cate: アナログディスク再生
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私にとってアナログディスク再生とは(その44)

これについては、少し長くなるけれど五味先生の文章を引用しよう。
     *
たとえば、ソニーが最近さかんに宣伝しているレコードがある。ノイマン社の最新型カッティング・マシンとカッティング・ヘッド、およびこれらを駆動かつ制御するトランジスター・アンプのトータルシステムによるもので、これによって「カッティング時の“音作り”を不要とし、マスター・テープそのままの音をディスクに忠実に再現する」と言っている。私のところにもそんなレコードが宣伝用に送られてきたが、さて鳴らしてみると、さっぱり音はよくないのだ。ソニーともあろうものが、こんなアホウなレコードをなぜ宣伝につかうのか、ふしぎでならなかった。
 そこで、同じノイマンのカッティング・マシンを購入している某社へ行って、私自身、レコードを録音してみたことがある。私はシロウトである。しかしシロウトでも技術者に介添えしてもらえば、カッティングぐらいはできる。ソニーの宣伝文句ではないが、〝音作り〟は今や不要なのだから。そしてカッティングと同時に刻々その音を再生し、モニター・スピーカーで聴けるようにマシンはできているが、これで聴くと「マスター・テープそのままの音」では断じてなかった。こんなものを「そのまま」とはよほどソニーの技術者の耳は鈍感なのか、と思ったくらいだ。
 さてそうしてカッティングしたレコード(私の場合はラッカー盤)をわが家へ持ち帰って聴いてみたが、おどろいた。さっぱりよくない。ソニーの宣伝用レコードと等質の、いやらしい音だった。念のために知人のジム・ランシングのパラゴンで聴いてみたが、やはりよくない。別の知人のアルテックA7でも鳴らしたが、よくない。
 ことわるまでもなく、市販のレコードは、カッターで直接カットしたラッカー盤を原盤とし、これをメッキし、再度プレスしたものである。私のラッカー盤は、これらの二工程を経ていないから、理論的には、よりマスター・テープに忠実といえるだろう。それがどうして悪い音なのか?
     *
頭の中だけで考えるならば、
マスターテープに記録されている信号をできるだけいじらずそのままにストレートに音溝として刻むことが、
いい音を得ることの唯一の方法のように思えなくもない。
だが、現実にはどうもそうではないことを、
私はオーディオをはじめると同時に、「五味オーディオ教室」で読んでいた。

実は、五味先生のいわれていることを同じことを菅野先生からなんどか聞いたことがある。
ステレオサウンドにいたころの話だから、1980年代のころだ。
マスターテープで聴くよりもレコードにして聴いた方が音はいいんだよ、と言われていた。
このことは1980年代のステレオサウンドの「ベストオーディオファイル」の中でも語られていたと記憶している。

俄には信じられない人もいよう。
あらためて言うまでもなく菅野先生は長年レコードの現場におられた。
その菅野先生の言葉だからこその重みがある。

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