Date: 11月 19th, 2011
Cate: Noise Control/Noise Design
Tags:

Noise Control/Noise Designという手法(その18)

CDが登場する数年前からデジタル録音のLPが大半のレーベルから発売されていた。
アナログディスクで聴いても、デジタル録音とアナログ録音とでは音そのもの質感の違いはあるけれど、
それ以上にテープヒスはアナログ録音では原理的にさけられないものであったのに、
デジタル録音では基本的には存在しなくなっていた。

そして1982年にCDとCDプレーヤーが登場した。
CDだからといって、すべてがデジタル録音なわけはなくて、アナログ録音のマスターとしたCDもあった。
そのころCDプレーヤーの完成度がいまから比較すると未熟で、
さらにどういうところが音質にどう関わっているのかも手探りの状態だっただけに、
おおまかな感触として、アナログ録音マスターのCDのほうがいい雰囲気で鳴ってくれることが多かったし、
このことはそのころに限定されるけれども共通した認識でもあった。

CDが登場したころ、よく言われていたのは、音楽がいきなり鳴り始めることに対する異和感についてだった。
アナログディスクでは無音溝に針を降ろして音楽が鳴り始めるまでに、なんらかの音(ノイズ)がする。
このノイズが一種の前触れになっていたわけだが、
CDでは、とくにデジタル録音のCDでは、そんな前触れは存在しない。

アナログ録音のものであれば、テープヒスが少しでもCDに記録してあればその部分の再生によって、
音楽がいきなり鳴り始めることはないけれども、
デジタル録音ではテープヒスもないから、いきなり、ということになってしまっていた。

アナログ録音のマスターによるアナログディスクでは、
テープヒスのほかに針が音溝をなぞっていくときに発生するサーフェイスノイズもあるし、
スクラッチノイズがある。
大きく、この3つのノイズが存在していた。

デジタル録音のマスターによるアナログディスクでは、
テープヒスがなくなり、サーフェイスノイズとスクラッチノイズがおもなノイズとなっていった。

そしてアナログ録音のマスターによるCDでは、
テープヒスがあった(実際にデジタル特有のノイズがあるのだが、あえてここでは省く)。
デジタル録音のマスターによるCDでは、テープヒスがなくなっている。

それまではっきりと耳で捉えることのできたノイズが、CDはほとんどなくなっているようにも聴こえた。
そうなってくると、「聴感上のS/N比」の意味するところが変化していった、
ともいえるし、その領域が広がっていった、ともいえよう。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]