妄想組合せの楽しみ(その11)
マグネシウム振動板のコーン型フルレンジ・ユニットは登場していたが、
なかなかコンプレッションドライバーは登場しなかった。
やっと今年、JBLから、これこそ満を持して、と言いたくなるほど、Series Vから20年以上待って、
4インチ・ダイアフラムのマグネシウム振動板を採用したS9900が登場した。
ここから、妄想は始まる。
マグネシウム振動板を、タンノイが採用してくれたら……、そんなことを想っている。
現行のデュアルコンセントリックのトゥイーター部の振動板は、アルミ・マグネシウム合金とある。
ならばマグネシウム合金振動板の採用もあるのではないだろうか。もう一歩、突き進んでくれればいいのだ。
そのとき、もう一度、オートグラフを復刻してくれたら、と妄想はさらにふくらむばかり。
オートグラフまで、とは言わないものの、エンクロージュアにはフロントショートホーンを採用してほしい。
これまで聴いてきたタンノイのスピーカーから出てきた音色にぐらっと心が大きく揺らいだのは、
いずれもフロントショートホーンつきのモノばかりだった。
オートグラフ、ウェストミンスター、
それにステレオサウンドの特別企画で製作されたコーネッタ・エンクロージュア。
タンノイのデュアルコンセントリックは、ご存じのように、ウーファーのコーン紙が、
トゥイーターのホーンの延長をかねている。
アルテックの同軸型ユニット、604シリーズが一貫してストレートコーンなのに対し、
デュアルコンセントリックは1947年のオリジナルモデルからカーブドコーンである。
そのデュアルコンセントリック・ユニットの前面にフロントショートホーンを設けるということは、
さらにホーンを延長することでもあり、トゥイーターのダイアフラムには、
より大きなアコースティックな負荷がかかっているのではないだろうか。
このくらいの負荷が、実は必要なのではないかと思うほど、
フロントショートホーンつきのタンノイの音色は、まことに美しい。
1986年に、創立60周年を記念して発売されたR.H.R. Limitedのエンクロージュアが
バックロードホーンだったのには、この先もタンノイは、ウェストミンスター以外に、
フロントショートホーンを採用することはないんだろうな、と、
勝手に描いていた夢が打ち砕かれたような気がした。
それでもマグネシウム・ダイアフラムのデュアルコンセントリックに、
フロントショートホーンつきエンクロージュアの、
タンノイ純正のスピーカーシステムが登場してくれることを、あきらめきれずにいる。