瀬川冬樹氏のこと(CDに対して……補足)
瀬川先生は、当時私が住んでいた熊本のオーディオ店に定期的に来られていた。
そこで、あるレコードについて
「これはどこにも表記されていないけれど、このレーベル初のデジタル録音です」と紹介されたことがあった。
瀬川先生は、そのレコードの音質を高く評価されていた。
とはいっても、それがデジタル録音だから、ではなくて、
アナログ録音だから、とか、デジタル録音だから、とか、録音器材が何々だから、といったこととは関係なく、
聴き手の元に届くLPとして、音が良いのかどうかだけを判断されたものだった。
そういう意味で、デジタル録音に対して偏見はお持ちでなかった、と思う。
FM fanの「ディジタル・ディスクについて」では、これに関することも書かれている。
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いま私たちになじみ深い30cmLP(ステレオ・ディスク)に、「ディジタル録音」とうたってあるものは、これから論じるディジタル・ディスクではない。現在通用している「ディジタル録音」とは、レコードに録音する途中で、テープに一旦録音する、そのテープ録音をディジタル化したものである。
いま現在のその「ディジタル録音」に対して、ディジタル化の是か否かを論じている人たちがあるが、これはナンセンスも甚だしい。
なぜかといえば、私たちがいま入手できるステレオLPに望むことは、良い音楽が、優れた演奏と良い音質で録音されていること。これが全てである。そのレコードを作る過程で、誰がどんな手を加えようが、ディジタルであろうがなかろうが、結果として出来上がったレコードの良否だけが私たちには問題なのだ。その途中がディジタル化されようがされまいが、そんなこと、私たちの知ったことではない。そういう話題に迷わされることなく、入手したレコードの良否をただ冷静に判断すればいい。
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これが書かれたころよりも、いまは録音・マスタリングに関する情報は増えている。
どんな人が録音に関わっている、とか、どういう器材を使った、とか、
いまはほぼデジタル録音だから、サンプリング周波数は、とか、ビット数は、とか、
ことこまかな情報が簡単に入手できるようになっているし、
これらのことを謳っているものもある。
だから、30年前に書かれた、この文章にあるように、
われわれは「そういう話題に迷わされることなく、入手したレコードの良否を冷静に判断すればいい」。