ナロウレンジ考(その6)
80Hzから5kHzのバンドパスフィルターを通して、
国産の、ウーファーが30cm口径のブックシェルフ型スピーカーシステムを鳴らしたとしよう。
高域を5kHzでカットしているから、どのスピーカーシステムの音も、高域が伸びていないと、まず感じるだろう。
そしてしばらく、といっても数分間ではなく数十秒ほどそのまま聴いてみると、
高域が5kHzでカットしてあることをずっと意識させられる音を出すスピーカーシステムと、
意外にも耳が馴れてしまうのか、最初に聴いたときほど意識しない音を出すスピーカーシステムとに分れるはず。
高域の伸びが足りないことをずっと意識させられる音のスピーカーシステムでは、
そのまま音楽を聴きつづけていくことはしんどく感じられるようになる。
もう一方の、それほどナロウレンジになったことを意識させない音のスピーカーシステムでは、
そのまま音楽を聴きつづけていくことはできる。
なぜ、このようなことがおこるのか(前回書いたように実際に試したわけではないが、ほぼこうなるはず)。
それはスピーカーシステムそのものの音の質に関係している、と言われるだろう。
では、その音の質は、スピーカーシステムのどういうところと関係しているのか。
国産の30cm口径のウーファーをもつ3ウェイのブックシェルフであるなら、
どのメーカーのスピーカーシステムをもってきても、その周波数特性は80Hz〜5kHzは余裕でカヴァーしており、
ほぼフラットな特性でもある。
つまりこのことは80Hz〜5kHzのバンドパスフィルターを通して状態では、
周波数特性的には同じになるといっていい。
多少この帯域内において凹凸があっても、それすらもレベル的には小さい。
なのに高域が常に足りないと意識させる音と、そうでない音とに分れるということは、
聴感上の周波数特性的に差が出るということは、ほぼ間違いなく応答性・過渡特性に密接に関係しているはずだ。