Mark Levinsonというブランドの特異性(余談・続×十 825Ω)
H-Z1の音は、たしかによく出来た音だった。整然と音を出してくれるが、蛇口全開の音ではなかった。
勢いが前面にたつ印象ではなく、むしろひっそりと鳴る面が、
C-Z1、M-Z1と同じラインナップということが頭にあるため、
よけいにつよく感じられた、そんなふうに記憶している。
ヘッドアンプに抱いている、スタティックな印象が拭い去れているのかと、H-Z1には期待していた。
H-Z1も入力インピーダンスの切替えが可能で、10、47、100、470Ωの4段階。
試聴に使ったカートリッジは、オルトフォンのMC20MKIIだった。
ローインピーダンスだから、10Ωでも問題ないが、それでもインピーダンスを高いほうに切り替えていくと、
わずかとはいえ、スタティックな音から活気が加わってくる音に移り変っていく。
それにともない、音楽の表情のコントラストも、すこしずつ明瞭になっていく。
どんなに微細な音まで鳴らしてくれるアンプでも、表情のコントラストが乏しければ、
暗くスタティックな音になってしまう。
470Ωのときの音が個人的にはいちばん好ましかったし、
もっとインピーダンスをあげていけばどうなるのか、825Ωにしたら、どうなるのか、と思ってもいた。
マークレビンソンのML7Lは、H-Z1の1年前に登場している。
ML7Lの825Ωをのぞければ、470Ωも高い負荷抵抗といえる。
それにML7L以降、記憶をたどりすこし調べてみると、クレルのPAM3(1984年登場)も、
内部のDIPスイッチの切替えで、5Ωから1kΩまで9段階で設定できる。
825Ωが、設定値の中に含まれているのかは忘れてしまったが、
すくなくともML7Lの825Ωの採用が、ヘッドアンプの入力インピーダンスを、
それまでよりも高くしたといえるだろう。