現代スピーカー考(余談・その3)
節倹の精神に富んでいるといわれるイギリス人。
いまもそうなのか、それとも薄れつつあるのかはわからないが、
過去のイギリスのオーディオ機器を眺めてみると、確かに、と納得できる例がいくつもある。
節倹とは、悪く言えばケチ、しみったれと言えなくもない。
長く使えるものを買い手は選び、つくり手は、意を尽くし必要最小限のことしかせず、
そのことが長持ちすることへつながっているようにも感じられる。
KEFの303はプラスチック樹脂製のエンクロージュアに、素っ気無い仕上げを隠すように、
グリルで、ほぼ全面を覆っている。
合理的なローコスト化であり、バラツキの少ない材質選び、製品づくりでもあろう。
303は木や紙といった天然素材を、ほぼ全面的に排除している。
バラツキの少なさはローコスト化につながるだけでなく、
そのための工夫は、結果として長持ちすることになっているように、
昨日、ひさしぶりに、303を見て、聴いて、そう思った。
KEFの303は、124000円(ペア、1980年当時)と同社の製品、輸入品としては低価格のスピーカーなのだが、
オーディオに関心のない人からすると、スピーカーだけに10万以上というのは、高価なものだろうし、
日本の大メーカーが、徹底すれば、同じつくりならば、もっと安く作れるはず。
けれど、同じ音がしても、ただ安くつくるだけでは、節倹の精神が息づいていなければ、
新品のころはまだしも、果たして30年──ここまで持たなくてもいいけれど、
10年、20年、古びてボロボロになることなく、303のように、きちんと音を鳴らしてくれるだろうか。
安くても、数年しか持たないスピーカーと、多少高くても長く使えるスピーカー、
どちらが真のローコスト・スピーカーなのかは、はっきりしている。
REPLY))
こんばんは、
このところ、瀬川さんの記事が増えていますね。
楽しみながら読ませていただいております。
「太陽神」のエピソードには驚きました。
あの手の音楽も受容されたのですね。
ここで取り上げられている303、ステサンの
スピーカー特集で、瀬川、菅野のお二人が10点、
黒田さんが9点を付けられ、たちまち憧れに(笑)
実際に手に入れたのは、昨年のことです。
ただ、BCⅡに比べ、高域の粗さと中域の薄さがあり、
満足する音で鳴らせていません。
この記事を読んで、再チャレンジを誓いました。
REPLY))
たっちん さま
コメント、ありがとうございます。
まだまだ瀬川先生については書きたいことがありますので、この先も続いていきます。
手もとにステレオサウンドが、きちんと揃っていれば、もうすこしピッチをあげて書いていけるのですが、
なにしろ10冊も残っていませんので、ぽちぽちと記憶を掘り起こしながら書いている次第です。
KEFの303は、私も、高校生でしたが、欲しい、と思っていました。