Date: 3月 31st, 2009
Cate: KEF, 現代スピーカー
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現代スピーカー考(余談・その3)

節倹の精神に富んでいるといわれるイギリス人。
いまもそうなのか、それとも薄れつつあるのかはわからないが、
過去のイギリスのオーディオ機器を眺めてみると、確かに、と納得できる例がいくつもある。

節倹とは、悪く言えばケチ、しみったれと言えなくもない。
長く使えるものを買い手は選び、つくり手は、意を尽くし必要最小限のことしかせず、
そのことが長持ちすることへつながっているようにも感じられる。

KEFの303はプラスチック樹脂製のエンクロージュアに、素っ気無い仕上げを隠すように、
グリルで、ほぼ全面を覆っている。
合理的なローコスト化であり、バラツキの少ない材質選び、製品づくりでもあろう。

303は木や紙といった天然素材を、ほぼ全面的に排除している。
バラツキの少なさはローコスト化につながるだけでなく、
そのための工夫は、結果として長持ちすることになっているように、
昨日、ひさしぶりに、303を見て、聴いて、そう思った。

KEFの303は、124000円(ペア、1980年当時)と同社の製品、輸入品としては低価格のスピーカーなのだが、
オーディオに関心のない人からすると、スピーカーだけに10万以上というのは、高価なものだろうし、
日本の大メーカーが、徹底すれば、同じつくりならば、もっと安く作れるはず。

けれど、同じ音がしても、ただ安くつくるだけでは、節倹の精神が息づいていなければ、
新品のころはまだしも、果たして30年──ここまで持たなくてもいいけれど、
10年、20年、古びてボロボロになることなく、303のように、きちんと音を鳴らしてくれるだろうか。

安くても、数年しか持たないスピーカーと、多少高くても長く使えるスピーカー、
どちらが真のローコスト・スピーカーなのかは、はっきりしている。

2 Comments

    こんばんは、
    このところ、瀬川さんの記事が増えていますね。
    楽しみながら読ませていただいております。
    「太陽神」のエピソードには驚きました。
    あの手の音楽も受容されたのですね。
    ここで取り上げられている303、ステサンの
    スピーカー特集で、瀬川、菅野のお二人が10点、
    黒田さんが9点を付けられ、たちまち憧れに(笑)
    実際に手に入れたのは、昨年のことです。
    ただ、BCⅡに比べ、高域の粗さと中域の薄さがあり、
    満足する音で鳴らせていません。
    この記事を読んで、再チャレンジを誓いました。

    1F

    たっちん さま
    コメント、ありがとうございます。
    まだまだ瀬川先生については書きたいことがありますので、この先も続いていきます。
    手もとにステレオサウンドが、きちんと揃っていれば、もうすこしピッチをあげて書いていけるのですが、
    なにしろ10冊も残っていませんので、ぽちぽちと記憶を掘り起こしながら書いている次第です。
    KEFの303は、私も、高校生でしたが、欲しい、と思っていました。

    2F

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