40万の法則が導くスピーカーの在り方(その5)
おそらくクレデンザは一台一台職人の手による完全な手作業によるモノだろうから、
作られた時期が違えば、多少の違いは仕方ないだろう。
できるだけ同じ時期に作られたもので、程度のいいモノを2台探し出して、
さらにウェスターン・エレクトリックの555も、程度のいいモノを2つ……となると、
いったいどれだけの予算を必要とするのか。
個人で、こんなことをやっておられる方は、きっといないはず、ではなくて、
どこかにおられるはず、だと思う。
一度でもクレデンザと555の組合せの音を聴いたことがある人で、
つまりその人は、そういう音に興味を持っている人であろうから、聴けば惹かれる、と思う。
以前、朝日新聞社が発行していた「世界のステレオ」の1号のカラーページに、
野口晴哉氏のリスニングルームが6ページにわたり紹介されている。
当時、この記事を見たとき、そこに紹介されているオーディオ機器の多くは、まだ知らないものばかりだった。
1976年の冬のことで、オーディオに関心をもってまだ数ヵ月、しかもこの本はこづかいが足りなくて買えなかった。
世の中には、すごい人がいるものだ、とただ驚いていた。
いま野口氏のコレクションを見ても、凄いと思う。
これだけのモノを、あの時代、よく集められたものだ、と思ってしまう。
予算がどれだけ潤沢にあっても、ただそれだけでは、あの時代、これらのモノのいくつかは入手し難かったはず。
野口氏のような御仁は、まだ他にもおられるはず。
そういう方の中に、きっとクレデンザ+555でステレオを楽しまれている方がおられても不思議ではない。
むしろひとりもいない、というほうが、私には不思議に感じられる。