オーディオの「本」(その11)
私がオーディオに関心をもちはじめたの1976年だから、オーディオブームのころである。
ブームだったからこそ、小さな田舎町の書店でも、ステレオサウンドだけでなく、ラジオ技術、無線と実験、
初歩のラジオ、電波科学、サウンドメイト、ステレオ、オーディオピープル、FM誌などが並んでいた。
書店に並んでいたから、私はオーディオというものに出合えた、といえる。
もしいま13歳の私が、いまの田舎にいたとしたら、オーディオと出合えただろうか。
いまはインターネットがある、という人もいる。
けれど13歳の小僧が、はたしてインターネットだけで、オーディオという、
それまでまったく知らなかった世界を知ることができるのか、と思う。
それに最初に出合うものは、重要だ。
以前勤めていた会社は新宿が近かった。
新宿には、以前、青山ブックセンターが2箇所あった。
いまのファーストブックセンターがはいっているところが、以前は青山ブックセンターだった。
新宿には、紀伊國屋書店の本店がある。
書店としての規模、それに比例するだけの本の種類、数は青山ブックセンターよりもずっと多かった。
つまりなにかおもしろそうな本を探すという目的には、
青山ブックセンターよりも紀伊國屋書店のほうが適している、といえそうだが、
私は、青山ブックセンターで探すほうが圧倒的に多かった。
すでに買う本を決めているときには紀伊國屋書店のほうが確実に探し出せることが多い。
でも、なにかおもしろい本、ということになると、紀伊國屋書店の規模は大きすぎる。
たまには上の階から順繰りに、あれこれ見てまわることもあるけれど、
そんなことをしょっちゅうやっていたわけではないし、
探し出しという感覚よりも、出合う、という感覚に近い探し方ができるのは、
私にとっては青山ブックセンターだった。
2店舗あるうちのどちらか、気が向いたらどちらも店舗をもみていると、
おもしろそうな本と出合えることが、わりと多かった。
そういった本と出合うことで、こういう世界があるんだ、と知ることになる。
いままで知らなかった世界との出合いにとって、書店の役割は重要だと、いまも思っている。