ルドルフ・フィルクシュニーのこと
ルドルフ・フィルクシュニーというピアニストがいることは知ってはいた。
けれど聴いてはいなかった。
きいたのは、菅野先生が1983年に録音されたディスクが初めてだった。
レーベルは、オーディオ・ラボではなく、スガノ・ディスクだった。
もちろん買って聴いた。
菅野先生がフィルクシュニーについて書かれてたこと、
話されたことは読んでいるし、聞いているけれど、
それでもフィルクシュニーのディスクを聴いて、ピンときたかといえば、そうでもなかった。
なので、このディスクをきっかけにフィルクシュニーの他の録音を聴くということもやらなかった。
TIDALに、フィルクシュニーの録音はある。
それでも、他に聴きたいものが数え切れないほどあるため、
ついそちらを優先して聴いてきたため、TIDALでもフィルクシュニーは聴かずのままだった。
つい先日、エリカ・モリーニの十三枚組CDボックスが発売になった。
それにあわせてTIDALで聴けるエリカ・モリーニのアルバムの数も増えた。
フランクのヴァイオリン・ソナタがある。
フィルクシュニーといっしょに写っているジャケットだ。
新たに聴けるようになったモリーニのアルバムは他にもあるが、
フィルクシュニーの姿が目に留ったということ、
フランクのヴァイオリン・ソナタということで、まず、このアルバムから聴いた。
期待したのはモリーニのヴァイオリンだったのだが、
印象に残ったのはフィルクシュニーのピアノだった。
なんと雄弁な演奏なのだろう、と思いながら聴いてきた。
フランクのヴァイオリン・ソナタは好きな曲だから、これまでもいろんな演奏(録音)を聴いてきた。
どれが一番なのか、そういうことではなしに、ピアノがこれほど印象に残るのは、
モリーニとフィルクシュニーによる演奏だけだ。
いまごろになって、もっともっと早くに、この演奏を聴いていたら、
菅野先生とフィルクシュニーについてなにかを話せただろうに……、と後悔している。