Date: 4月 15th, 2011
Cate: オリジナル
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オリジナルとは(その8)

マランツの管球式コントロールアンプModel 7は、最初ソウル・B・マランツの設計だと伝えられていたが、
ほんとうのところは、Model 2、5、8、9などの一連のパワーアンプを設計していたシドニー・スミスによるもの。

そのシドニー・スミスが、1990年代に台数限定でModel 7のメンテナンスを行っている、ときいたことがある。
当然劣化した部品を外して交換するわけだが、
Model 7に使われていたコンデンサーのBlack Beauty はすでに製造中止。
仮に未使用の新品の Black Beauty が、
広いアメリカのことだから、丹念に探していけばどこかで見つかるかもしれないけれど、
シドニー・スミスは、Black Beauty ではなく、TRW社のコンデンサーに交換していた、ときいた。
このことは、ラジオ技術誌で、石塚氏も同じことを書かれていたと記憶している。

シドニー・スミスが、Model 7に使いたかったコンデンサーは、実は Black Beauty ではなくて、
Goodall(グッドール)製のもので、それの現代版がTRWということらしい。

マランツModel 7の音は、Black Beauty でなければならない、という人が少なからずいるのは知っている。
けれど、Black Beauty は信頼性が低い。特に日本のような高温多湿の環境では、モールドが割れてしまい、
湿気が内部に入り込んでしまう。これでは初期特性はまったく維持できない。

アメリカ国内で、環境のいいところで保存されていた Black Beauty を手に入れることができたとしても、
それに交換したとしても、日本で使っているかぎり、遅かれ早かれ、Black Beauty は確実に劣化する。

もちろん24時間365日、温度も湿度も一定に管理した部屋に置いておければ、
劣化の心配もそれほどしなくてもすむだろう。

そういえば、五味先生が、「いい音いい音楽」の中に、次のようなことを書かれている。
     *
彼を訪問して参考になったのは、アンプ内のコンデンサーが経年による容量変化をきたし、音の劣化する事実を端的に見せられたことである。カリフォルニアは日本と違い、ほとんど雨は降らない。したがって湿気によるトラブルはないのだが、それでも、何年も使いこむうち、容量が変わり、その分、確実に音質はわるくなっていく。感心したのは、彼がわざわざ日本へ発送された米国製の有名なアンプ(それも昨今〝幻のアンプ〟といわれている)で、永年、日本で使用されたものを二台、取り寄せ、一台は旧のまま、一台はコンデンサーを全部新品に取り替えたのを比較試聴させてくれた。聴きくらべてあまりな音の違いに私は絶句したのだ。とても同一メーカーのアンプとは思えなかった。
 私は忠告する。〝幻のアンプ〟をいまでも使っている愛好家は日本にかなりいると思うが、それは鳴っているだけで、工場を出荷当時の音質とはずいぶん劣下したものと考えるべきであり、ぜひコンデンサーを新品と取り替えてごらんなさいと。忘れていたそれこそ名アンプの美音が、甦るでしょう、と。
     *
この〝幻のアンプ〟は、たぶんマランツの7か、マッキントッシュのC22のどちらかだろう。
どちらにしても、コンデンサーは Black Beauty だ。

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