あるスピーカーの述懐(その25)
1980年前後に、コバルトの世界的な不足により、
アルニコマグネットからフェライトマグネットへの変更が、
各スピーカーメーカーで行われた。
タンノイもアルテックもJBLも、アルニコからフェライトへという流れに逆らえなかった。
この時、JBLだけが、対称磁界ということを謳った。
アルニコとフェライトでは、磁気特性の違いにより、最適な形状が違ってくる。
そのためスピーカーユニットの磁気回路の設計も、当然変更になる。
JBLは、SFGということを積極的にアピールした。
SFGとはSymmetrical Field Geometryである。
フェライトマグネットはドーナツ状であり、外磁型となる。
フェライトマグネットをはさみこむようにトッププレートとバックプレートがある。
磁気回路のセンターポールピースがあり、
このポールピースとトッププレートのあいだに磁界が発生する。
ここで重要になるのはポールピースの形状である。
通常のフェライトマグネットのユニットが円筒状であるのに対して、
JBLのSFGユニットはT字状になっていた。
ポールピースがただの円筒状だと、非対称磁界になってしまう。
ポールピースがT字状であり、
T字の横棒の部分がトッププレートと同じ厚みであるSFGユニットでは、
対称磁界となる。
JBLは特許を取得していたはずだ。
だから他社はマネすることができなかった。
けれど、それからずいぶん時間が経っている。
特許は切れている(はず)。
振動板やフレームとか、外側から見えるところに関しては、
各スピーカーメーカーが、積極的にアピールしている。
マグネットについても同じである。
けれど磁界が対称であるのかそうでないのか。
このことに触れているメーカーはどれだけあるのだろうか。