Date: 4月 26th, 2021
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ズザナ・ルージィチコヴァ(その1)

ズザナ・ルージィチコヴァという、チェコ出身のピアニストのことを知ったのは、
1988年、音楽之友社から出たムックだった。

そのムックは、器楽奏者を特集していた。
そのなかで、ズザナ・ルージィチコヴァだけは知らなかった。

初めて目にする名前ということに加えて、
一度では正確に憶えられそうにない名前、
これだけが印象に残っていた。

ズザナ・ルージィチコヴァに書かれていたのが、誰なのかはもう憶えていない。
手元に、そのムックもない。

グレン・グールドが、黒田先生が担当で六ページの扱いだったのに対し、
ズザナ・ルージィチコヴァは二ページと少なかったことは憶えている。

通り一遍のズザナ・ルージィチコヴァについてのことを読んでも、
聴いてみたい、という気はほとんど起きなかった。

その数年後、黒田先生の「ぼくだけの音楽」で、
二度目のズザナ・ルージィチコヴァについての文章を読む。

この時、ズザナ・ルージィチコヴァを聴きたい、とおもった。

黒田先生は、握手について書かれていた。
《ルージィチコヴァの手は、まるで赤ん坊のように小さくて、しかも、力を入れて握ったらこわれてしまいそうに柔らかかった》
そう書かれていた。

黒田先生は、ズザナ・ルージィチコヴァにインタヴューされている。
黒田先生の、ズザナ・ルージィチコヴァへの最初の質問は、
「なぜ、あなたは、ピアニストではなく、チェンバリストになられたのですか?」だった。

《ごく平凡な、しかし、ぼくがもっとも知りたかった質問》とも書かれていた。

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