Date: 3月 16th, 2021
Cate: 再生音
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続・再生音とは……(その31)

辞書(大辞林)には、再生のところにこうある。

(1)死にかかっていたもの,死んでいたものが生き返ること。蘇生。
(2)心を改め,くずれた生活からまともな生活に戻ること。更生。「—を誓う」
(3)廃品となったものを再び新しい製品に作りなおすこと。「—した紙」「—品」
(4)録音・録画したものを機械にかけてもとの音・画像を出すこと。「映画の名場面を—する」「—装置」
(5)再びこの世に生まれること。「弘法大師を—せしめ/文明論之概略(諭吉)」
(6)失われた生体の一部が再び作り出されること。下等生物ほど再生能力が強い。
(7)〔心〕 記憶の第三段階で,記銘され保持された経験内容を再現すること。想起。

オーディオで、再生といえば四番目の意味が常識となっている。
だからこそ再生音ともいう。

けれど再生に三番目の意味がある。
再生紙とか再生ゴムとか、そういった意味での再生があるから、
再生音といういいかたを嫌う人がいても不思議ではない。

私は、再生音といういいかたが、むしろ好きである。
それは一番目、二番目の意味での再生音ととらえているところがあるからだ。

EMIのクラシック部門のプロデュサーだったスミ・ラジ・グラップは、
「人は孤独なものである。一人で生まれ、一人で死んでいく。
その孤独な人間にむかって、僕がここにいる、というもの。それが音楽である。」
と語っている。

ここでも何度も触れている。
孤独な人間は、死に向って急いぎはじめているかもしれない。
そんな孤独な人間に、僕がここにいる、と寄り添ってくれる。

ならば、その音楽に身を寄せて死に向い始めていた心が、
再生に向い始めるのを音楽を聴くことで待つこともあるからだ。

オーディオで聴く音とは、音楽である。
だからこそ、私は再生音を使う。

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