瀬川冬樹氏のこと(バッハ 無伴奏チェロ組曲・その4)
タイトルとはほとんど関係ないことなのだが、
フルニエといえば,グルダとのベートーヴェンのチェロ・ソナタと変奏曲がある。
1959年の録音で、フルニエは六年後に、ケンプとのライヴ録音を行っている。
どちらもドイツ・グラモフォンである。
いま日本ではどちらのほうが評価が高いのだろうか。
レコード雑誌も読まなくなってけっこう経つ。
名曲・名盤の企画では、ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、
誰の、どんな演奏が選ばれるのか、まったく知らない。
1980年代のなかばごろだったと記憶している。
黒田先生が、フルニエとグルダのベートーヴェンは素晴らしい演奏が聴けるのに、
忘れられかけられていて、残念なことである、と書かれていた。
フルニエのベートーヴェンが発売になった当時のことを知っているわけではないが、
ケンプとのライヴ録音は、その年のレコードアカデミー賞を受賞している。
そのことでグルダとのベートーヴェンのほうは、日本では影が薄くなったのだろうか。
フルニエとグルダのベートーヴェンは、CD+Blu-Ray Audioで出ている。
MQA(192kHz、24ビット)もある。
フルニエとケンプは、SACDが出ていた。
DSF(2.8MHz)とMQA、flac(96kHz、24ビット)がある。
少なくともいまは忘れられているわけではない、といえる。
瀬川先生は、ベートーヴェンのチェロ・ソナタは、誰の演奏を好まれていたのだろうか。
ステレオサウンド 16号の富士フイルムの広告(モノクロ見開き二ページ)、
左上に、
オーディオ評論家リスニングルーム深訪シリーズ(2)
瀬川冬樹氏
とある。
右側には、広告のコピーがある。
*
音楽とは、ずっと
蓄音機時代から……。
うーん……〈太公トリオ〉が
ぼくの初恋。
あまりの感激に
床にしゃがみこんじゃったな。
衝撃的なフィーリング
だったんですよ……。
*
瀬川先生(というよりも大村少年)の音楽の初恋は、
ベートーヴェンの大公トリオなのだ。
カザルス・トリオのだ。
こんなことを書いていると、瀬川先生の愛聴盤リストがないのだろうか、とおもう。
「岩崎千明と瀬川冬樹がいた時代(その10)」でも書いているが、
岩崎先生の「オーディオ彷徨」には愛聴盤リストがある。
瀬川先生の「良い音とは 良いスピーカーとは?」には、ない。