TANNOY Cornetta(その4)
くり返しになるが、コーネッタというスピーカーシステムは、
ステレオサウンドが販売していたエンクロージュア・キットSSL1と、
タンノイの10インチ口径の同軸型ユニットを組み合わせたものである。
SSL1はキットだから、買った人が組み立てることになる。
アンプのキットでも、組み立てる人の技倆になって、結果は違ってくる。
スピーカー(エンクロージュア)のキットも、まったく同じというか、
むしろそれ以上に難しいのかもしれない。
井上先生は、よくいわれていた。
まったく同じエンクロージュアを二つ作ることは、
木工のベテランであっても、そうとうに困難なことである、と。
接着剤の量の、ちょっとした違いや、
その日の気温や湿度、
その他にもさまざまな要因が絡んできて、
しかもスピーカーのエンクロージュアは大型になればなるほど、
ホーン型であったりすればなおのこと、製作日時をより必要とする。
そのためにどうしてもバラツキが生じてしまう。
コーネッタ(SSL1)のキットは、
ある程度は、購入者が組み立てやすいようにと配慮されている。
この点が、記事中のプロトタイプとの違いの一つでもある。
それでも木工の初心者には、そうとうに難しいキットといえるだろう。
コーネッタは、あのころのタンノイのスピーカーを鳴らしている人、
憧れている人からみれば、挑戦してみたくなる存在であったはずだ。
インペリアル工芸だったと記憶しているが、
コーネッタを、15インチ口径用に大型化したエンクロージュアを製品化していた。
コーネッタのキットを購入した人、
ステレオサウンドの記事を見て、板の切り出しから自作した人、
少なくない数のコーネッタが誕生したのではないだろうか。
アメリカにも、コーネッタを自作したマニアがいる、とfacebookのコメントにあった。
ステレオサウンドのキットだけに絞っても、
出来上がりはピンからキリまで、といっていいだろう。
ましてキットには頼らずに自作したモノとなれば、
もっとピンからキリまでなのかもしれないし、
むしろ逆に、これだけの工作に挑戦する人だから、
それなりの技術をもっている人ともいえるだろうから、
むしろ一定の品質の幅におさまっているのかもしれない。