2020年ショウ雑感(その23)
黒田先生の「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」に、
フィリップス・インターナショナルの副社長の話がでてくる。
引用するのは、これで四回目になる。
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ディスク、つまり円盤になっているレコードの将来についてどう思いますか? とたずねたところ、彼はこたえて、こういった──そのようなことは考えたこともない、なぜならわが社は音楽を売る会社で、ディスクという物を売る会社ではないからだ。なるほどなあ、と思った。そのなるほどなあには、さまざまなおもいがこめられていたのだが、いわれてみればもっともなことだ。
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「ききたいレコードはやまほどあるが、一度にきけるのは一枚のレコード」は1972年の文章だ。
レコード会社は、確かに《ディスクという物を売る会社》ではなく、
《音楽を売る会社》である。
レコードが、いまではアナログディスクのことを指し示す言葉として扱われるようになっているが、
レコード(record)は、記録、録音といった意味であるから、
音楽を録音して売る会社が、レコード会社であり、
時代時代によって、SPであったりLPであったり、
CD、SACD、MQA-CDでもあったりする。
それだけでなく、オープンリールテープ、カセットテープなどもあった。
ならばオーディオ会社は、何を売る会社なのだろうか。
スピーカーを売る会社、アンプを売る会社、
アナログプレーヤーを売る会社……、なのだろうか。
スピーカーやアンプを売っていることは確かだ。
それは当時、フィリップスが、LPやカセットテープを売っていたのと同じことだと捉えれば、
オーディオ会社は、音を売る会社ともいえる。
オーディオショウは、ならば、音を売るためのショウとも考えられる。
そうであるならばオーディオショウのあり方は、いまのままでいいのか、とも考えなければならない。