シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(パワーアンプは真空管で・その2)
池田圭氏の「盤塵集」に、こんなことが書いてある。
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このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上の周波数特性とかひずみ率などの問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる。
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ここではテープデッキの出力となっているが、
CDプレーヤー、チューナー、コントロールアンプの出力の場合もだ。
その出力にライントランスの一次側だけを並列に接続する。
二次側は開放のままである。
「盤塵集」を読んで数年後に試したことがある。
タムラのライントランスで、一次側が20kΩ、二次側が600Ωの仕様だった。
たしかに池田圭氏の書かれているとおりの音になる。
音の静けさも変化してくる。
タムラのトランスは、別のことに使うことになり、取り外したが、
また追試してみよう、とは思っている。
なぜ、そのように音は変化するのか。
トランスは一次側の巻線を信号経路に並列にするだけである。
あれこれ、その理由を考えた時期がある。
結局、これも直流域での抵抗が低さが効いているのではないだろうか。
一次側が20kΩだと、直流抵抗はそれほど低くはない。
それでもアンプのライン入力インピーダンスの一般的な値よりはずっと低くなる。
そういえば池田圭氏は、なるべく太い巻線のトランスのほうが、より効果的とも書かれていた。
つまりは直流抵抗がより低いトランスのほうが、ということでもある。