Date: 4月 15th, 2020
Cate: ディスク/ブック
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バッハ 平均律クラヴィーア曲集(その3)

ライナーノートによれば、
SACD化にあたって、
《真のオリジナル・アナログ・マスター・テープにさかのぼって真の音を探し出すことを第1の目標》
とする、とある。

かなり大変な作業だった、ようだ。
このへんのことはライナーノートにある。

そして、こうも書いてある。
     *
トランスファー本番ではリヒテルの弾く「平均律」の音から、これまで気づかなかったいろいろなことが見えてきました。何といっても、真のオリジナル・マスターの音は非常に柔らかい天国的な音です。以前のCDではシャープに聴こえていた爪の音が意外に小さいこと、前奏曲とフーガにおける右手と左手に微妙なバランスの違いがあること、そして3回のセッションにおける音の違いが手に取るようにわかります。
     *
リヒテルの平均律クラヴィーア曲集が、教会で録音されたことは知っていたが、
今回のSACDで、第一集が、クレスハイム宮とエリーザベト教会、
第二集がクレスハイム宮とポリヒムニア・スタジオでの録音だったことを知る。

「3回のセッション」とは、そういうことである。
ライナーノートにあるように、セッションによる音の違いがよくわかる。

そして《非常に柔らかい天国的な音》という表現も、誇張ではない。

私が聴いたLPは、日本ビクターのだった。
それ以外のLPは聴いていない。
それらの音が、どんなだったのかはわからないが、
少なくとも2012年発売のSACDは、もう.これでいい、と思わせる。

1978年に発売されたLPのタスキには、
《一生持っていて繰り返し聴くに足る演奏》
という吉田秀和による推薦辞があったのは、よく知られているし、
CDにもそのまま使われてもいた。

《一生持っていて繰り返し聴くに足る演奏》である。
けれど、これまでは繰り返し聴くに足る音とは、言い難かった。

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