スイッチング電源のこと(その5)
オーディオアンプにスイッチング電源が採用されたのは1970年代後半からだから、
スイッチング電源という考え方は、それ以前からあったのだろうなぁ、ぐらいには思っていた。
数日前に、あるニュースサイトに
『コンピューターや家電製品の「電源」はどのように進化してきたのか?』という記事があった。
この記事によると、スイッチング電源の構想は1930年代とある。
まだトランジスターが登場していないころである。
動作周波数20kHzのスイッチング電源は、1960年代後半に登場したこともわかる。
この記事に刺激されて、スイッチング電源の歴史で検索してみると、
なかなかおもしろい。
1974年ごろ、Robert Boschert氏によるスイッチング電源の簡略化が実現してなければ、
オーディオへの採用はもっと後になっていたかもしれない。
とにかくそうやってビクターやソニーのパワーアンプ、
それからテクニクスのコンサイスコンポへ搭載された。
このころのスイッチング電源は、100Vのみだった。
いまのスイッチング電源は、そうではない。
メリディアンの218のリアパネルには、100-240V ACとある。
内部は緯線を切り替えることなく、100Vでも200Vでも、240Vでも対応できる。
いまではあたりまえのことなのだが、
初期のスイッチング電源ではそうではなかったから、進歩といえる。
けれどオーディオに関していえば、進歩と素直に喜べない面もある。
スイッチング電源は、まずダイオードで整流し、コンデンサーで平滑する。
通常の電源は、まず電源トランスがあり、そこで電圧を昇圧・降圧したうえで、
整流・平滑とする。
つまり通常の電源の場合、平滑用コンデンサーにかかる電圧は、
各国の電源事情にあわせて電源トランスの一次側の巻線で対応するため、
100Vの国だろうと、もっと高い電圧の国であろうと同じである。
スイッチング電源は、そこが違う。