モノと「モノ」(世代の違い・その3)
18のときに、SMEの3012-R Specialを買った。
何度も書いているようにステレオサウンド 58号での瀬川先生の文章を読んでから、
このトーンアームが、私が望む音を出すためには絶対に必要なモノという思い込みがあった。
しかも当時の広告には、限定とあった。
どうにかして手に入れなければならない。
当時の価格は、88,000円だった。
それでも18の私には高価だった。
16の時に、サンスイのAU-D907 Limitedを買っている。
約二倍ほどの価格だったが、修学旅行に行かずに積立金と、
新聞配達で貯めたお金をあわせて、一括払いで買った。
でもSMEの時には、そういう手はなかった。
分割払いで買うしかない。
初めての分割払いである。
頭金は五千円くらいしか払えなかった。
それでもなんとか買うしかない、と意気込みだけはあった。
東京で、はじめてのオーディオ店で、見つけた。
これを買うしかない、これを逃したら……、
とにかく店員に声をかける。
もうこれだけでどきどきしながらの行動だった。
確か12回払いで買った。
秋葉原から、当時住んでいた三鷹まで電車で持って帰る。
袋に入っているから、周りの人には何を持っているのかはわからないが、
それでも、「今日からSMEオーナーだ」と誇らしい気持になっていた。
そういう買い方から、東京でのオーディオが始まった。
当時は、こういう買い方しかできなかった。
いまはどうだろうか。