憶音という、ひとつの仮説(その6)
人はどうやって音を聴いているのか。
特にオーディオマニアは、どうやって音を聴いているのか、
そしてどうして音が比較できるのか。
そんなことを考えて思いついたのが、憶音である。
別項「50年(その9)」で書いたことが、憶音の発想のきっかけである。
根拠は特にない。
ただ、これまでさまざまな機会で音を聴いてきて、
その時々で感じたなぜ? に答を見出そうとして思いついたことである。
なので妄想じみた考えなのは自覚している。
それでも思うのは、人はその場で鳴っている音を聴いているのではなく、
実のところ、いったん脳に記憶にされた音を聴いているのではないだろうか。
ようするに3ヘッドのテープデッキのような仕組みである。
録音ヘッドがテープに記録した磁気変化を、すぐ隣りにある再生ヘッドが読み取り電気信号へと変換する。
テープが脳にあたる。
耳から入ってきた音(信号)を、脳が記憶する。
この記憶の仕方・性能は、人によって違ってくるだろうし、
同じ人であっても、その日の体調やその他によって左右されるのかもしれない。
そうやって記憶した音(信号)をなんらかの方法で再生して、
その音(信号)を聴いている。
しかもテープのトラック数は一つとは限らない。
これも人によって違ってくるように感じている。
それにトラックによって、記憶の性能にバラツキもあるのかもしれない。
ただひとつ違うのは、テープには「記録」されるのであって、脳には「記憶」されることだ。
少なくとも音楽に関しては、
そして、これもなぜなのかはまったくわからないが、
オーディオを介して鳴ってくる音楽に関しては、少なくともそうなのではないのか。