アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その5)
ジンバルサポートのトーンアームは、
回転軸のところに三本のネジがある。
垂直に一つ、水平に二つある。
まれにだが、この三本のネジをかなりきつく締めている人がいるのを知っている。
アナログプレーヤーの各部にガタツキがあれば、
それはてきめん聴感上のS/N比の劣化につながる。
井上先生も、以前ステレオサウンドで、
アナログプレーヤーのセッティングでの注意点として、
ネジをしっかり締めておくこと、といわれている。
基本的にはそうだが、
井上先生はその上で、締め過ぎてはいけないネジがあることも、きちんといわれていた。
それでも、そこまで読んでいないのか、
ただただネジをしっかり締める人がいるようだ。
ある国産のアナログプレーヤーで、ジンバルサポートのトーンアームがついていた。
そのモデルを、ヤフオク!で手に入れた知人がいる。
うまく鳴らない、という連絡があった。
行ってみると、トーンアームの感度が悪い。
ゼロバランスも取りにくいほどに、感度が悪く、
水平方向に動かしてみても、こんなに重い感触である。
知人がいうには、そのプレーヤーを使っていた人は、
けっこうなキャリアを持つ人のようだ、とのこと。
もちろんヤフオク!だから、実際に会って確かめたわけではなく、
商品の説明文を読んで、そう思っただけらしいのだが、
それにしても、こんな状態のトーンアームで、
その人はアナログディスクを再生できていたのか、と疑問である。
原因は回転軸のところにある三本のネジの締め過ぎだ。
一度ゆるめて締め直す。
締め過ぎにはしない。
たったこれだけのことで、トーンアームの感度はまともになった。
きちんとレコードが鳴るよう(トレースできるよう)になった。
あたりまえのことをしただけだ。
それにしても、と思う。
ほんとうに知人の前に使っていた人はキャリアの長い人だとしたら、
こういう状態を動作品とするのならば、
(その1)の最後で書いたように、これもひとつの老い(劣化)なのかもしれない。