トーンコントロール(その10)
瀬川先生が、「コンポーネントステレオの世界 ’79」の巻頭、
「’78コンポーネント界の動向をふりかえって」で、トーンコントロールについて触れられている。
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また、音楽の愛好家ならば、レコードを録音本位では買わない。自分の好きな曲、好きな演奏家、を選ぶのは当り前だ。それが結果として良い音であれば嬉しいが、中には録音のコンディションのために、低音や高音の過不足もある。それをそのまま聴くというのもひとつの態度だろうが、私はそれほど寛大になれない。もう反射的に、手がトーンコントロールにのびて、音のバランスを修整したくなる。料理をひと口たべてみて、胡椒をひと振りするのと全く同じだ。ひとふりの胡椒、ひとつまみの塩が、どれほど味を生きかえらせることだろう。
そういう意味で、くりかえすが私はトーンコントロールやラウドネスコントロールや、フィルタのコントロール類を、やたらと省略するアンプの作り方に全く賛成できない。録音の良いレコードばかりが用意されて、遮音の十分なメーカーの試聴室の中で十分な音量で聴きながら仕上げているかぎりは、たしかにトーンコントロールは不要だろうが、現実に私たちの手に渡ってからのアンプは、そういう聴かれかたばかりではないのだ。GASやマランツやマッキントッシュやQUADのコントロールアンプは、決してトーンコントロールをないがしろにしていない。マーク・レビンソンも、JC2がML1Lになって音質は納得がいったが私自身はLNPにこだわるのもそのためだ。
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《ひとふりの胡椒、ひとつまみの塩が、どれほど味を生きかえらせることだろう》
とある。
よくできたトーンコントロールを、
うまく使いこなせれば、ひとふりの胡椒、ひとつまみの塩の例えはまさにそうであり、
味が生きかえることはある。
10月2日のaudio wednesdayで、
メリディアンの218のトーンコントロール機能を、iPhoneでいじっていて、
そのことを実感していた。
それは、初めての、ともいいたくなる実感でもあった。
マークレビンソンのLNP2の3バンドのトーンコントロールは、使ってみると納得できる。
LNP2のトーンコントロールは連続可変ではなく、
切替えスイッチによるステップ式である。
それで不満を感じないといえばそうともいえるが、
時として、ステップがもう少し小さければ、もっといいのに……、
そうおもうことがまったくない、とはいえない。
218は低音と高音の2バンドのトーンコントロールで、
0.5dBステップで増減できる。