598というスピーカーの存在(KEF Model 303・その14)
そういう菅野先生だから、ステレオサウンド 43号のベストバイでは、
AU707について《透明な抜け、しなやかさ、空気感の再現では607に一歩譲るようだ》
とされている。
あわせて井上先生の43号でのAU607についても読んでおきたい。
《このモデルの独特とでもいえるプレゼンス豊かな音は、素晴らしい魅力である。物理的な性能の高さをベースとした漂うような音場感と、クッキリと細やかな輪郭で浮上らせる音像は、ナチュラルであり、QS方式での音場再生技術が活かされている》
やはり、AU607には、菅野先生、井上先生が指摘されているように独特のプレゼンス感がある。
AU707について、井上先生も
《AU−607よりもパワーアップされているために、独特のプレゼンス感は力感の裏側にかくれている》
と書かれている。
AU607とAU707は、どちらも電源トランスを左右で独立させていた。
EIコアの電源トランスを二基搭載していた。
おもしろいのは、D607、D707になってからだ。
D607は607と同じで、Eiコアの電源トランスを左右独立にして二基、
D707は大型のEIコア型の電源トランス一基に変更になっている。
もちろん巻線は左右独立だが、電源トランスは一基である。
AU-D907は、というと、こちらは二基だが、左右独立ではない。
パワーアンプの出力段用にトロイダルコアの電源トランス、
プリ部、パワーアンプの増幅部用にEIコアの電源トランスという構成だ。
Dがつくようになって、このサンスイのプリメインアンプ・シリーズは、
単なる普及機(607)、中級機(707)、上級機(907)という括りではなくなっている。
サンスイのアンプづくりのノウハウが、一歩、もしくは二歩三歩進んでいるかのようでもある。
しかもあわせて注目したいところが、出力段のトランジスターの数である。