メリディアン ULTRA DACを聴いた(その32)
ラックスのDA7と同じ1988年、
無線と実験の読者投稿欄に、ユニークなD/Aコンバーターの自作記事が載った。
楠亮平氏という方によるNOS DAC(Non Over Sampling D/A converter)である。
記事に掲載されていた回路図は、
こんなに少ない素子数でD/Aコンバーターが自作できるのか、というくらいだった。
デジタルフィルターを排除したD/Aコンバーターだった。
詳細までは記憶していないが、
デジタルフィルターの問題点を指摘してのものだったようにも記憶している。
NOS DACは、この記事だけで終りはしなかった。
自作派の人たちのあいだでも、さまざまなNOS DACが作られていったのは、
Googleで検索してみればすぐにわかることだし、
メーカーからも製品化されたこともあるし、現行製品でもある。
デジタルフィルターとの組合せが前提設計のD/Aコンバーターでは、
デジタルフィルターを省いてしまうと、技術的な問題点が発生する──、
そういう指摘の記事も読んだことがある。
それはそうだろう、と思いながらも、NOS DACはプリエコー、ポストエコーが発生しない。
そのことに(そのことだけではないだろうが)音質的メリットを感じる人がいる。
そうでなければ、単なるキワモノ的な記事で終っていただろう。
少なくとも1988年には、プリエコー、ポストエコーの問題を指摘する流れが生れていた。
もっとも現在では、FIR型デジタルフィルターでも、
対称型ではなく非対称型の設計にすることでプリエコーを抑えている。
プリエコーとポストエコーとでは、プリエコーの方が音質上影響が大きい、といわれている。