スイッチング電源のこと(その2)
ビクターのM7070の音は、私にはクラシックを聴くための音とは思えなかったが、
だからといって、質が悪いと感じたわけではなかった。
同時代のカートリッジのエンパイアの4000D/III。
このカートリッジに似た印象が、どこかしらあった。
どちらもクォリティの高さをきちんと持っているけれど、
クラシックを聴く者にとっては、その良さがプラスの方向に働いてくれないところがある。
聴く音楽がクラシックでなければ、
4000D/IIIもM7070も、その良さが存分に発揮されるはずだ。
しかも4000D/IIIとM7070をもってきての組合せは、
一度聴いてみたかった、と思わせる。
何がいいたいかというと、M7070の印象が、
私の場合、スイッチング電源の印象につながっている。
次にスイッチング電源を採用したアンプで思い出すのは、
無線と実験での、金田明彦氏の発表されたアンプだった。
私が読み始めたころは、金田式DCアンプには、
タムラ製のトロイダルトランスが使われていた。
それが乾電池に代っていった。
ナショナルの乾電池で、より高い電圧を得るために、
乾電池と増幅部とのあいだにスイッチング電源をいれ、昇圧していた。
そのころの無線と実験はとっくに手元からなくなっていて、
記憶も少し曖昧なところもあるが、
スイッチング電源の周波数の重要性に言及されていた。
どのくらいの値だったのかは忘れてしまっているが、
20kHzよりは高い周波数だった。
M7070の35kHzよりも高かったように記憶している。
より高い周波数で動作させてこそのスイッチング電源なのか、と、
そのころ思っていたし、
M7070の35kHzが70kHz、さらには100kHzになっていたら、
M7070の音はさらに磨かれていくのでは……、そんなことも考えながら、
そのころは金田明彦氏の記事を読んでいた。