Date: 5月 11th, 2019
Cate: TANNOY
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タンノイはいぶし銀か(その6)

いぶし銀のごとき味わい、とか、いぶし銀といえる音などと表現してあるのを見て、
読み手側は、いったいどんな音を想像しているのか。

いぶし銀を言葉で説明してくれといわれて、
こういう音だとすらすら答えられる人は多いのか少ないのか。

普段からいぶし銀という表現を使っている人でも、
わかりやすく説明してくれ、といわれると、どう答えるのか。

「タンノイの音だよ」という答が返ってくるかもしれない。
なんと具体的で、これほど曖昧な答もない。

それでも答える側は、それでわからないのか、と思っているかもしれない。

なかには「うちの音がそうだよ」と答える人もいよう。
いぶし銀がどういう音なのか、わからなければ、うちの音を聴きに来ればいい、
そんなふうにいってくれる人もいるだろう。

聴きに行ったとしよう。
それでわかるのは、「うちの音がそうだよ」と答えた人が考えているいぶし銀の音でしかない。
その音を、十人に聴かせたら、何人がいぶし銀と感じるのかはなんともいえない。
一人もいないかもしれない。

百人くらい聴いたとしたら、数人は「確かにいぶし銀ですね」というかもしれない。
いぶし銀で表現される音に対する共通認識は、そのくらいではないのか。

タンノイの音を、どこかで聴いて、これがいぶし銀といわれる音なのか……? と感じる。
どこかで聴いたタンノイの音は、百人いれば百人とも違うはずだ。

どこかの販売店で聴いたタンノイ、
オーディオショウで聴いたタンノイ、
オーディオマニアのリスニングルームで聴いたタンノイ、
そして自分の部屋で鳴らしたタンノイ、
どこにいぶし銀といえる音はあるのだろうか。

もう、そこから出てきた音を、そうおもうしかないのか。

オーディオマニアが、心の中に抱きつづけている幻想としての「いぶし銀」。
それは時として、おもわぬ美音を生んでいくかもしれない。

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