メリディアン ULTRA DACを聴いた(トランスポートとのこと・その5)
CDプレーヤーが世に登場し、
フィリップスのピックアップメカニズムを搭載した海外製のCDプレーヤーがいくつか登場し始めた時、
フィリップスのピックアップの方が、国産のピックアップよりも音がいい傾向がある──、
そんなことがいわれるようになった。
このことが広くいわれるようになったようには感じていなかったが、
少なくともステレオサウンドの試聴室に持ち込まれる各社のCDプレーヤーの新製品を聴くうちに、
なんとなく誰もが感じとっていたことのように思っている。
アナログプレーヤーではリニアトラッキングアームが理想のようにいわれている。
国産のCDプレーヤーのピックアップはリニア方式だった。
フィリップスは、当時はスイングアーム方式だった。
だからスイングアームの方がいいのかもしれない、ともいわれたし、
いまはどうなのか知らないが、当時の国産のピックアップは、いわゆるMM型だった。
フィリップスはMC型だった。
カートリッジと同じで、MM型のほうがレンズを含めた実効質量は軽くできる。
MC型はその点では不利である。
けれど、音を聴けば、
カートリッジにおけるMM型とMC型に通ずる音の差があるのではないか──、
そんなこともいわれていた。
さらにいえば、当時は国産はプラスチックレンズ、フィリップスはガラスレンズということもあった。
ここでもプラスチックよりもガラスの方が……、
これらのことが厳密な比較試聴で実証されているわけではない。
ただ感覚的にそう捉えられていた。
今回ULTRA DACと組み合わせたスチューダーのD731は、
フィリップスのスイングアーム方式の最後のメカニズムCDM4Proを搭載している。
ピックアップメカニズムだけで、トランスポートとしての性能がすべて左右されるわけではない。
そんなことはわかっていても、
D731と接続したULTRA DACの音を聴いていたら、
そんな昔にいわれていたことを思い出していた。