「新しいオーディオ評論」(その15)
ステレオサウンドは1966年創刊だから52年である。
創刊号を手にとった人は、若い人ならば60代半ばぐらいからいるだろうし、
70代、もっと上の人もいる。
創刊号を小学生の時から読んでいたという人がいるのどうかはわからないが、
私の知る範囲でも、創刊号ではないけれど、
小学五、六年のときにステレオサウンドの読者になった、とうい人は数人いる。
創刊号からずっと読んでいる人もいれば、途中でやめた人もいる。
私のように途中から、という人がもっとも多いだろうし、
その途中からずっと読みつづけている人、途中でやめた人がいる。
もっとも長い人は50年以上ステレオサウンドを読んでいる。
そこまでではないにしろ、20年、30年くらい読んでいる人はけっこういる。
私もずっと読みつづけていれば40年以上の読者となっている。
雑誌というものは、そのようにずっと読みつづけている読者もいれば、
いま書店に並んでいる209号が、最初のステレオサウンドという読者もいる。
創刊数年程度の雑誌なら、こういう問題はまだ先のことだが、
創刊されて数十年経つ雑誌では、難しい問題である。
最初の読者のレベルに合わせてしまえば、数十年読んできている人は満足しない。
後者を満足させるような記事ばかりでは、初めての読者はおいてけぼりになってしまう。
それだけでなく、それだけの内容の記事をつくることの難しさも生じる。
それでも読みつづける初めての読者ももちろんいるけれど、そう多くはない。
初心者は初心者向けの雑誌を読んでいればいい、というのは、いまでは通用しないし、
昔でも、正しい意見とは思わない。
私は初心者向けの雑誌とステレオサウンドを同時に手にして読んできた。
初めての読者に媚びを売るような記事は必要ない、と思っている。
けれど、いまはステレオサウンドとどのオーディオ雑誌を併読すればいいのか。
そういう問題もある。
雑誌が抱える問題に対し、ステレオサウンドは既に答を出しているように感じる。
それが替えの利く読者の量産である。