音の悪食(その9)
マッキントッシュのアンプは、寝起きが悪いと感じたことはない。
毎月鳴らしていて、むしろ寝起きが早い方かな、と感じていた。
アンプの寝起き(ウォームアップによる音の変化)が問題になったころ、
SAEのMark 2500やトリオのL07シリーズは、電源を入れているだけではだめで、
三時間以上鳴らしていないと本領発揮とならない、
ようするに寝起きの悪い(悪すぎる)アンプとして知られていた。
どんなアンプでも寝起きに時間は必要となる。
しかも寝起きが一回とは限らない。
十分鳴らしていても、あきらかに音が変ることは意外に多い。
それも承知していても、昨晩の音の変化ははっきりとしていた。
おそらく昨晩の音の変化はアンプだけが理由ではなく、
ネットワークにしても二ヵ月鳴らしていなかったわけで、
スピーカーも私が鳴らすのは二ヵ月ぶりだから、
それらが重なっての音の変化なのはわかっている。
わかっていて、こんなことを書いているのは、
20時ごろに帰った人がいたからだ。
人それぞれ事情があるのはわかっているし、彼は毎回早く帰る。
無理に引きとめたりはしない。
けれど、「トリスタンとイゾルデ」以降の音を聴かずに帰ってしまうのは、
もったいない、と思った。
毎回思うわけだが、特に昨晩はよけいそう思った。
こればかりは時間の短縮は無理である。
正味鳴らしている時間が、ある一定以上必要なのだから。