「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(その49)
ステレオサウンド 57号での結果に、オーレックス側から編集部にクレームは来たのか。
57号は1980年12月発売で、私はまだ読者だった。
どうだったのかはわからないが、
58号に「No.57プリメインアンプ特集・追加リポート」という一ページの記事がある。
これは24号の「本誌23号の質問に対する(株)日立製作所の回答」とは違い、
目次にもきちんと載っている。
「No.57プリメインアンプ特集・追加リポート」は編集部原稿である。
冒頭には、57号での測定結果に対して、多くのユーザーから編集部に問合せがあった、と。
なので編集部は秋葉原のオーディオ店でSB-Λ70を購入。
さらに東芝商事から、別のSB-Λ70を借りて、再測定を行っている。
結果はクリーンドライブの効果が見られる。
結果として、57号でのSB-Λ70は《何らかの原因で異常をきたしていたものと判断される》とある。
最後にはクリーンドライブによる音の差もはっきりと聴き分けられた、ともある。
ただしオーディオ評論家による試聴ではなく、ステレオサウンド編集部による試聴である。
今回、58号の記事を読み返して気づくのは、
編集部に問い合せたのは、読者ではなくユーザーとある点だ。
58号当時も、私はオーレックスからクレームが来たんだろうな、と思って読んでいた。
いまも、もちろんそう読めるわけだが、読者とせずにユーザーとしたところに、
編集部の何かを感じとれる。
二例をあげた。
他にももっとあるんじゃないか、と勘ぐる人もいるはずだ。
だがメーカー、輸入元にとって、ステレオサウンド編集部にクレームを入れるということは、
編集長が謝罪すればそれで済むということではないはずだ。
編集長の謝罪よりも、ステレオサウンドの誌面に訂正記事が載ることを、まず望むのではないか。