「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(その37)
1984年に、増刊としてサウンドスタイルが出ている。
ジュニアさんが最後に、ひとりで手がけた本である。
サウンドスタイルというムックを知っている人は少ない。
そのころステレオサウンドを読んでいた人でも、知らない人が意外にいる。
売行きはよくなかった、はずだ。
だから、つまんない本だった、といいたいわけではなく、むしろ逆である。
この本のときのジュニアさんの仕事の仕方は、確かに問題があった。
完全に朝と夜とを逆転させていた。
会社員として、それはまずい。
そんなことはみんなわかっていることだ。
ジュニアさんもわかっていたばずだ。
わかっていたけれど……、
……のところは本人だけにしか書けないところだし、
そこについて書くつもりはない。
結局、そのためにジュニアさんはステレオサウンドを去ることになる。
問題社員といえばそうである。
問題社員は会社には要らない。
才能は関係ない。
私は違う意味での問題社員だったから、
ジュニアさんの約四年後にそうなった。
いまおもう。
ジュニアさんが去ったときに、いまのステレオサウンドへいたる道が始まった、と。
こんなことは、いまの編集部の人たちに、どうでもいいことなのだろうが。