オーディオの楽しみ方(つくる・その22)
瀬川先生は
《レンジが広がれば雑音まで一緒に聴こえてくるからだというような単純な理由だけなのだろうか》
と書かれている。
SICAの10cm口径のダブルコーンのフルレンジがうまく鳴った音を聴いて、
50年前では考えられないほどのローノイズでの再生が、簡単にできるようになっても、
フルレンジ一発の音は、独自の美しさで音楽を鳴らす。
結局は、いまの技術ではレンジを広げるために、
スピーカーユニットの数を増やしていくことで、
雑音まで再生されるのではなく、何らかの雑音を発生させている──、
と考える方が理に適っている、と思う。
その雑音とは、一種類ではない。
電気的な雑音、機械構造的な雑音、音響的な雑音、
さらにいえば時間的な雑音、
それらいくつもの雑音が少しずつ発生してしまうから、
ひとつひとつの雑音はたいしたことはないのかもしれないが、
複雑に影響しあっているような気さえする。
ひとつひとつの雑音が音に与える影響は微々たるものであっても、
それらの雑音が相加・相乗作用によって、
音に与える影響の質、そしてその量が著しく変化するということかもしれない。
以前にも書いているが、有吉佐和子氏の「複合汚染」だ。
実際のところはどうなのかはわからない。
そう想像しているだけである。
けれど、少なくとも音楽の美しさに対しての影響は誰の耳にも明らかなはずだ。