「菅野録音の神髄」(その3)
「5 Saxophones」、「SIDE by SIDE 2.」、「THE DIALOGUE」、
この三枚のディスクがかけられるであろうことは、
オーディオラボの録音を全部とはいわないまでも、
けっこうな枚数を聴いてきた人ならば、予想できていたはずだ。
「THE DIALOGUE」、
何が残念だったのかといえば、その音以前に、ボリュウム操作だった。
SACDプレーヤーのPLAYボタンを押してからの操作であった。
もう音が鳴り始めてからボリュウムを上げていては、
このディスクの一曲目の「ベースとの対話」においては、なおさらである。
なぜ、この曲だけ、そんな鳴らし方だったのか、といまも残念に思う。
今回の講演は「菅野録音の神髄」であって、
「菅野録音の神髄を聴く」ではない。
だから、それほど音に期待していたわけではない。
ただ、こうして書いているのは、音量設定も、その操作も含めての音であるからだ。
優に百回以上は聴いている「ベースとの対話」。
どういう音が鳴ってくるのか、熟知しているといえるにも関らず、
この「ベースとの対話」がうまく鳴った時の出だしの音のインパクトの強烈さ。
その音が鳴ってくるとわかっているにもかかわらず、ドキッとする。スリリングである。
なのに音が鳴り始めてからボリュウムを上げていては、
「THE DIALOGUE」を聴いていないのか、と問いたくなる。
(ボリュウムを含めての操作は江崎友淑氏がやられていたわけではない。)
かけなおしてもいいじゃないか、と思っていた。
ボリュウムをあげてからPLAYボタンを押すようにして、もう一度かければいいのに……。
でも残念なことに、そのまま最後まで鳴っていた。
江崎友淑氏の話の中に、曲を最後まで聴くことの大切さがあった。
最後まで聴く、ということは最初から聴く、ということである。
そこが忘れられた「THE DIALOGUE」だった。