オーディオ機器を選ぶということ(購入後という視点・その9)
瀬川先生が、ステレオサウンド 47号のベストバイで三つ星でつけられているモノ、
スピーカーシステムでは、QUADのESL、JBLの4343、4301、4350A、スペンドールのBCII、
ヴァイタヴォックスのCN191、ロジャースのLS3/5A、KEFのModel 104aB、Model 105、Model 103、
セレッションのDitton 66、K+HのOL10、ヴィソニックのDavid 50である。
たしかに《すでに自分で愛用しているかもしくは、設置のためのスペースその他の条件が整いさえすればいますぐにでも購入して身近に置きたいパーツ、に限られる》。
プリメインアンプをみると、よりはっきりする。
三つ星をつけられているプリメインアンプは一機種もない。
コントロールアンプも、同じといえる。
三つ星はマークレビンソンのLNP2のみである。
パワーアンプは、いくつかに三つ星をつけられている。
パイオニアのExclusive M4、マークレビンソンのML2、QUADの405、ルボックスのA740、
SAEのMark 2600がそうである。
大半が購入されている。
スピーカーシステムで購入されていないのは、ヴァイタヴォックスのCN191、K+HのOL10、
JBLの4350Aくらいか。
4301とModel 103はどうだったのか、購入されたのか。
パワーアンプのSAEのMark 2600はその前のMark 2500を愛用されていた。
瀬川先生は(その8)で引用したところに続いて、こう書かれている。
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みて頂ければわかるとおりAのつくパーツがすべて高価であるとは限らない。たとえばカートリッジのエラック(エレクトロアクースティック)STS455Eや、スピーカーのヴィソニック〝ダヴィッド50〟あるいはロジャースのLS3/5Aなどは、日常気楽にレコードを楽しむときに、私には欠かせない愛用パーツでしかもここ数年来、毎日のように聴いてなお少しも飽きさせない。
だが反面、少しばかり本気でレコードをじっくり聴きたいときには、どうしても、EMTの♯927Dst、マーク・レビンソンのLNP2L、SAEの♯2500、それにJBLの♯4341、という常用ラインのスイッチを入れる。これらのパーツを入手したときには、それぞれに購入までの苦労はあったけれど、買って以来こんにちまで、それに支払った代償について後悔などしたこともないし、それよりも、価格のことなどいいかげん忘れかけて、ただもう良い音だなあと満足するばかりだ。
どのような形であれ、入手した製品に対する満足感が数年間も持続するなら、それはもう文句のないベストバイといって差し支えあるまい。そして、このように本当の意味でのベストバイを上げるとなれば世の中にいくら数千点にのぼるパーツが溢れていようとも、ひとりの人間が責任を持ってあげられる製品の数はおのずと限定されてしまう。
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つまり瀬川先生が三つ星をつけられているのは、
瀬川先生にとっての《本当の意味でのベストバイ》であり、
《ひとりの人間が責任を持ってあげられる製品》でもある。