オーディオは男の趣味であるからこそ(その11)
昭和31年(1956年)に、「新版 アマチュアオーディオハンドブック」が出ている。
日本オーディオ協会によるもので、オーム社から出ていた。
第1章:音の物理と生理
第2章:リスニングルーム
第3章:マイクロホン
第4章:レコード
第5章:ピックアップ
第6章:レコードプレーヤ
第7章:テープとテープレコーダ
第8章:レコーデッドテープとプレーヤ
第9章:チューナ
第10章:真空管とトランジスタ
第11章:プリアンプとメインアンプ
第12章:スピーカシステム
第13章:ステレオ再生装置
から成り、それぞれの章はこまかい項目に分けられている。
第13章:ステレオ再生装置は、池田圭氏が担当されている。
ここに「経済性の問題」という項目があり、短期的に、長期的に、ついて書かれている。
長期的に、のところから引用しておく。
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一生を賭けて
ハイファイのために、再生音響に一生を賭ける人はきわめて少ない、と断言して過言ではないであろう。
大体、ハイファイなどの好きになるのは若い頃で、青春の熱情凝ってステレオに血道を上げるのは、この時期に属する。多くは学生時代にである。やがて社会人となる頃から熱は冷め始めるそして結婚生活、出産……この時期に至ってもなおレコードやテープいじりをやっているくらいであると、一生を賭ける見込みがある。ほとんどはこの時期に『ハイファイよさらば』というのが一般的なコースである。経済的な不如意と多忙のためにハイファイなどやっていられないのである。子供の成長はいよいよこれに拍車を加える。……やがて生活の安定、中年頃に到って返り咲くこともある。
なかにはハイファイと職業が結びつくこともある。けれども、それはそれなりに真のハイファイと結びつかないことも多い。
かくて、やがて死が訪れる。
けれども、一生を、地位も名誉も金も望まず、ただ再生音響のハイファイ化に一生を賭けて悔なき人があるならば、以下のようなコースをとってはどうであろうか。
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もう一度いう、60年前に、これは書かれている。