好きな音、好きだった音(その4)
新品のスピーカー、
それも封を切ったばかりのスピーカー、
特に中高域に金属の振動板を採用したスピーカーは、
耳障りな音を出す傾向が、ままある。
特にホーン型は、鳴らし込みが必要だ、といわれてきた。
鳴らし込みはエージングともいわれる。
エージングは、agingである。老化とも訳せる。
鳴らし込みには時間がかかる。
ある意味では、老化といえる。
スピーカーは振動によって音を発しているわけだから、
自らが発する振動によって、エージング(老化)が進むところもある。
スピーカーを構成するあらゆるところがヘタッてくる。
いつしか耳障りな音がしなくなり、音がこなれてくる。
鳴らし込みとは、たしかにそういうものなのだが、
力みを取り去っていくことでもあるように、10年ほど前から感じるようになった。
人と同じで、若いころほど力みがある。
力があり余っているから、ともいえる。
それが歳をとり、力も少しずつ衰えていく。
けれど、一方で力みも消えていくのではないだろうか。
すべての人がそうだとはいわないが、気がつけば力みが少なくなっている、
消えている、ということは、50を過ぎている人であれば、感じているのではないだろうか。
以前できなかったことが、いつのまにかすんなりできるようになっている。
特に練習したとか、そんなことはしていないのに……。
それはおそらく力みがなくなってきたからだ、と私は思っているし、
スピーカーの鳴らし込み(エージング)の肝要な点は、まさにここのはずだ。