好きな音、好きだった音(その2)
オーディオマニアにはモノマニアの側面がある。
モノマニアとしてみたときに、イギリスのBBCモニター系列のスピーカーには、
ある種のものたりなさを感じてしまう。
JBLのユニットは、モノマニアを満足させてしまう。
そういうところはBBCモニターに使われているユニットには、まったくない。
あと少し本格的なユニットをだったら……、と思うことはしばしばあった。
本格的なユニットがつけば、その分コストにかかってくる。
ユーザーに負担をかけることにもなる。
これで充分だろう、という作り手側の主張なのかもしれない。
そう頭でわかっていても、モノマニアの心情はそうはいかない。
イギリスでもタンノイ、ヴァイタヴォックスのユニットは、本格的なつくりだった。
フェライトになってからのタンノイはそうではなくなったが、
ヴァイタヴォックスのウーファー、ドライバーは、それだけ見ても魅力的だった。
それでも音を聴くと惹かれるのは、
モノマニアとしてものたりなさを感じてしまうスピーカーばかりといってもよかった。
うるおいがあったから、と(その1)で書いた。
たしかにそうである。
ずっとそうだと思い込んでいた。
間違っていたわけではない。
けれど40をこえたころからだったか、
それだけで惹かれていたわけでもないことに気づきはじめた。
私が惹かれたスピーカーの音には、力みがなかったからだった。