スペンドールのBCIIIとアルゲリッチ(その11)
「コンポーネントの世界」からはあとひとつだけ、
岡先生の発言を引用しておく。
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岡 いやそうではなく、ぼくの場合は欲が深いというか、なんでも聴いてやれという主義でずっときたからですよ。そういう考え方は、いい音楽なんてレコード以外では聴けなかったころからレコードを聴いていたために、ひとりでに身についてしまったんでしょうね。だからこのレコードに他のレコードと違うところがあるとすれば、それはなんだろう。そのよさはどこにあるんだろう。どんなレコードからだって、ぼくはそういうものを発見したいのです。いいかえると、自分が一歩退いたかたちで、受け身のかたちで、レコードを聴いているんです。瀬川さんはそうてはなく、ずっとアクティヴなレコードに対する考え方をもっていると思いますね。
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レコードの聴き手として、岡先生と瀬川先生は、その姿勢に違いがある。
瀬川先生は、菅野先生がレコード演奏、レコード演奏家という表現を使われる以前から、
レコードを演奏する、という表現を使われていた。
「コンポーネントの世界」でも、
菅野先生のレコード演奏家論に通じる発言もされている。
一歩退いて受け身のかたちでレコードを聴かれる岡先生、
ずっとアクティヴなレコードに対する考え方をもって、レコードを聴かれる瀬川先生。
スペンドールのBCIIIの、岡先生と瀬川先生の評価は、
そのことを抜きにしてしまっては、オーディオ評論のおもしろさがわかってこないし、
BCIIIという、一度も聴いたことのないスピーカーのことを、
こうやって書いている理由も、そこである。