続・再生音とは……(波形再現・その4)
実際には無理なのだが、仮にすべて同条件での測定が可能になったとして、
何をもって正確な波形再現がなされているかの基準が、
アナログディスクの場合、ないといえる。
アナログディスクを再生した波形と、
マスターテープの波形が一致することは、まずありえない。
こまかな説明は省くが、マスターテープを再生したテープデッキの信号を、
カッティング時において正確にラッカー盤に刻んでいるという保証はない。
しかも、そのラッカー盤を聴いているわけではない。
それを元にプレスされた盤が、市販されているアナログディスクである。
ここでもありえないことだが、仮に正確にカッティングされ、
ラッカー盤のクォリティを完全に維持したままのアナログディスクがあったとして、
今度はカートリッジのトレースの問題がある。
カッターヘッドについている針とカートリッジの針とでは、形状が違う。
このことに起因する問題は、アナログプレーヤの教科書的な本のほとんどで書かれている。
ことこまかに書かないが、こんなふうに細部まで検討すればするほど、
アナログディスクでの波形再現という測定は、絶対的とはいえず相対的なデータということになる。
ならばデジタル(CD)ではどうか。
CDならば、アナログディスクのように溝がすり減るということはない。
それにマスターテープが、CDと同じ規格(44.1kHz、16ビット)でデジタル録音されていれば、
波形再現の測定に使えるはずと考えがちになる。
たしかにアナログディスクよりはCDのほうが……、といえよう。
けれど厳密に考えれば、やはり疑問がある。
とはいえ世の中には完璧なものは何ひとつ存在しないことを考慮すれば、
CDは、測定における再現性を含めての実用の範疇に入ってくる、とはいえる。
そこでデジタル音源(CDには限定しない)を使った波形再現、
それもスピーカーを含めてのシステム全体としての波形再現は可能なのか、
そこでの測定から読みとれることは何なのか。