続・再生音とは……(波形再現・その3)
ステレオサウンド 48号でのレコードレベル記録測定のブロックダイアグラムをみると、
被測定プレーヤーは、80kg定盤の上にのせられている。
アナログレコードを使って測定なのだから、
外部からの振動・衝撃が被測定プレーヤーに伝わってしまっては、
その振動・衝撃もレコードレベルとして記録されてしまう。
80kg定盤とあるだけで、詳細はついては書いてなかった。
80kg定盤だけで、外部振動・衝撃を完全に遮断することは無理だから、
わずかとはいえ、それらの影響も測定結果にあらわれているはずだ。
そうなってくると、厳密な測定は非常にむずかしい。
私がいたとき、測定は三回やっていた。
アンプの歪率の測定の場合でも、必ず三回同じアンプで同じ信号で行う。
測定ミスが起っていないかを確認するためでもある。
それに測定は何機種も行う。
アナログディスクで、一機種あたり三回行い、
20機種とか30機種の測定になるわけだから、
30機種であれば90回、同じアナログディスクを再生することになる。
そうなると、アナログディスクの傷みも問題となる。
測定ごとにディスクも交換したら……、
これはこれで厳密な測定とはいえなくなる。
複数枚の同タイトルのアナログディスクの溝の状態が同一という保証はない。
すり減りにくいアナログディスクがあったとして、
カートリッジを被測定プレーヤーに取り付けて、
高さの調整、ゼロバランス、針圧の調整、
場合によってはラテラルバランス、インサイドフォースキャンセラーの調整を行う。
針圧は正確な針圧計をもってくれば、同じにできるが、
高さ、ラテラルバランス、インサイドフォースキャンセラーの量を、
すべて同一条件にできるかというと問題もある。
それからカートリッジの左右の傾きも調整してなければならない。
針圧をわずかに変化させただけで音は変化する。
その変化量がレコードレベルの測定結果にもあらわれるはずだから、
アナログディスクを使った波形再現の測定は、
メーカーが実験的に行うことはあっても、
オーディオ雑誌に客観的データとして掲載することは、
細心の注意を払ったとしても、種々の問題をクリアーできるとはならない。