新製品(TANNOY Legacy Series・その12)
1981年秋に登場したGRF Memoryは、
ハーマンインターナショナル傘下時代のタンノイのラインナップ、
つまりABCシリーズの不満、もしくはものたりなさをおぼえていた人たちからは、
好意をもって迎えられた、といえる。
でも私は、ある疑問を感じていた。
1970年代後半のステレオサウンドの広告をきちんとみていた人なら、
サワダオーディオの名に記憶があるだろう。
堺市・沢田電機工業所内にあったサワダオーディオは、
ウエスギアンプの代理店でもあったし、サワダオーディオ・ブランドで、
スピーカーシステムを出してもいた。
当時のサワダオーディオの広告には、
「東方の音 地上で聴ける最上の音。」というコピーがあった。
その下にスピーカーの写真があった。
スピーカーの手前には、小さな女の子がLPのダブルジャケットを広げている。
サワダオーディオのスピーカーシステムは、耽能居という。
タンノイの当て字だ。
耽能居は、三種類あった。
耽能居 S295A、耽能居 S315A、耽能居 S385Aである。
エンクロージュアだけも売られていた。
耽能居 S385Aの形状、それに寸法が、
GRF Memoryとほぼ同じなのだ。
耽能居 S385Aが数年前に登場しているのだから、
GRF Memoryが耽能居 S385Aにそっくりといえるわけだ。
耽能居 S385Aにタンノイ的装飾を施したのがGRF Memory、
そういってもいいように感じた。