ホーン今昔物語(その10)
ステレオサウンド 61号「Best Products 話題の新製品を徹底解剖する」に、
JBLのスタジオモニターの新製品が登場した。
スタジオモニターといっても、4300シリーズではなく、4400シリーズ。
4320の2ウェイから4343、4350の4ウェイへと発展してきた4300シリーズから一転して、
2ウェイのスタジオモニターが4400シリーズである。
2ウェイであることが4400シリーズの特徴ではなく、
だれもが初めて目にする特異な形状の新型ホーンこそが、
4400シリーズの特徴である。
最初4435の写真をみて、また新しいホーンの登場なのか、と早とちりした。
菅野先生による4430、4350の記事の冒頭には、バイラジアルホーンとある。
58号の「ユニット研究」に登場した2360と同じバイラジアルホーンなのである。
そのことに気づいてみても、すぐには同じ理論のホーンとはすぐには理解できなかった。
まずあまりにも大きさが違いすぎる。
4435のクロスオーバー周波数は1kHz。
2360の推奨クロスオーバー周波数は500Hzとはいえ、あまりにも開口部の大きさも、
いちばん気になる奥行きの長さも違う。
4435に搭載されているバイラジアルホーンは、ショートホーンである。
そのかわりというか、半球状の凸部を縦に二分割して左右に振り分け──、
といっても分割面が近接しているのではなく、分割面がホーンの両サイドにくる。
臀部のように見えなくもない、このホーンをよく見ると、
縦に長いスリットがあり、そこから急に開口部がひろがっていることに気づく。
確かにアルテックのマンタレーホーン、JBLの2360に共通するかたちである。
マンタレーホーンは1978年に、2360は1980年のオーディオフェアに登場している。
登場したばかりの定指向性ホーンが、1981年には4400シリーズに搭載されるまでになっている。
定指向性ホーンの理論はそのままであるはずなのに、
そこから導き出されたかたちは、わずかのあいだに変化した。
そしてJBLが、本気でバイラジアルホーンに取り組んでいることを感じていた。