オーディオとバイアス(その2)
CDが登場したころ、よく耳にしたことがある。
LPはジャケットがまずCDよりも大きい。
そのジャケットから内袋に入ったディスクを手稲に取り出す。
さらに内袋から、丁寧にディスクを取り出す。
指紋や手の脂がディスクにつかないように、ディスクの縁とレーベルでディスクを支える。
それからターンテーブルにディスクを置く際も、
レーベルにヒゲ(センタースピンドルの先端でこすった跡)がつかないように、である。
レコードのクリーニング、カートリッジ針先のクリーニングを経て、
ようやくカートリッジをディスクに降ろす。
とうぜん、この作業も慎重に、である。
CDは、というと、片手でケースを開けることもできるし、片手で持ち、
CDプレーヤーのトレイに置く際も、LPのように神経質になることはない。
クリーニングも基本しない。
取り扱いは、ずっと気楽にできる。
そのことをよし、と捉える人もいれば、
LPをかけるときの、一種の儀式的な行為が必要なくなったから、
聴く前の気構えのようなものがなくなってしまった──、
そんなことがよくいわれていた。
LPをかけるときの一種の儀式、
これもバイアスのひとつであり、
バイアスを必要とする聴き手がいる、ということである。