4343と103(その2)
4343までのJBLのエンクロージュアの大きな特長は、リアバッフルを含めて、
はずさせるところが1箇所もなかった点だ。
エンクロージュア強固につくるために、ユニットもネットワークも、表からの取りつけとなっているし、
板と板の接ぎ合わせは、いわゆる接着ではなく、
JBLがウッドウェルドと呼ぶ、一種の溶接に近い方法をとっている。
エンクロージュアの材質のチップボードは、木を細かくしたチップを接着剤で練り固めたもので、
接合部に高周波加熱をすることで、チップボードから接着剤が融け出し、溶接のように一体化する。
このころのJBLのエンクロージュアは、意外にチップボードが使われていた。
積層合板を正式に採用し、それを謳ったのは、4344のフロントバッフルからのはずだ。
また4344ではドライバー、トゥイーターの交換が簡単に行なえるように、
リアバッフルの上部がネジ止めされるようになっている。
これは4345から採用されている。
4343の、向きを変えられるようにしたバッフルは、あたりまえだがネジ止めである。
フロントバッフルが一枚板で、しっかりと接着されている4341、4344とは異るし、
4343の弱い点だと指摘される方もいる。
実際、そうだろうし、4343のフロントバッフルが一枚板でしっかりと固定されていたら、
4343は、もうすこし使いこなしやすくなっていたかもしれない。
とはいえ、一枚バッフルだったら、ウーファーとレベルコントロール・パネルとの間のスリットがなくなる。
4343のカッコよさに惹かれたものにとって、これは、かなり重要なことだ。
4343のバッフルの向き変えとユニット配置は、どちらが先に発想されたのだろうか。
4341、4344と同じユニット配置では無理だし、
ウーファー、ミッドバス、ミッドハイのユニットの中心を揃えた配置だから可能なことである。
4343だけ違うユニット配置ということから推測すれば、
おそらくバッフルの向き変えの発想が先にあったのではないだろうか。
縦置き、横置き、どちらでも使えるようするという発想は、KEFの103のサイズだったらわかるが、
4343サイズのスピーカーで、それをやってしまうのは、アメリカだからできるのかもしれない。