B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その2)
B&Wの800シリーズの評価は、常に高い、といっていいし、
新型が出るたびに評価はあがっていく。
にも関わらず、オーディオ評論家で自家用として鳴らしている人はいない。
ここでいうところのオーディオ評論家とは、
私の場合、主にステレオサウンドに執筆している人ということになる。
他のオーディオ雑誌に執筆されている人に関しては触れないことにしている。
800シリーズは、ステレオサウンドでの評価が最も高いといえるし、
ステレオサウンドではリファレンススピーカーとしていること、
それに他のオーディオ雑誌に執筆している人のシステムに私が詳しくないこともある。
こういうことを指摘すると、
たいていは、こんな答が返ってくる。
「仕事用のスピーカーと趣味用のスピーカーは違うから」
これももっともらしい答で、これで納得する人もいるかもしれないが、
そんなお人よしな性格のオーディオマニアは少ないのではないか。
まずオーディオ評論家にとって、
自身のリスニングルームは、ひとりの音楽愛好家として音楽を聴く場であるとともに、
オーディオ評論家としての仕事場でもある。
そこにメーカーや輸入元からアンプやCDプレーヤーその他を持ち込まれて試聴もする。
もちろん、ここでも、こんなことはいえる。
B&Wの800シリーズの音を聴くと、仕事モードの耳になってしまうから、と。
ならば自家用として鳴らしているスピーカーでは、仕事モードの耳にならない、とでもいうのか。
それでは自宅に持ち込まれたオーディオ機器の試聴はできない、という道理になる。
でも実際にはそうではない。
それに仕事モードの耳とは、どういうことなのか。
細かな音の違いを聴き分けようとする耳のはずだ。
これはオーディオを仕事としていない人でも、そういうモードの耳で聴くことは当り前にある。
それとも仕事モードの耳は、もっと違うことなのか。
このメーカーの製品はほめておかなければならない、とか、
そういったことを考えながら聴く耳が、仕事モードの耳とでもいうのか。