シンプルであるために(ミニマルなシステム・その21)
1970年後半に、FET一石使用のゼロバイアスのヘッドアンプの製作記事を、
オーディオ雑誌で何度か見かけた。
FETの他には抵抗とコンデンサー、
電源は消費電流が少ないこともあって、乾電池を使った製作例もあった。
それらの製作記事の詳細を憶えているわけではないが、
シンプルで音がいい、的なことが書かれてあったはずだ。
FETが一石ということは、これ以上増幅素子を削ることはできない。
増幅するには最低でも何らかの増幅素子がひとつは必要となる。
FET一石のゼロバイアスのヘッドアンプは、
シンプルなのかミニマルなのか。
増幅素子に限らず、抵抗やコンデンサーいって部品も少ない方が、
アンプとしてシンプルである、といわれがちだし、思われがちだ。
でも、ほんとうに能動素子、受動素子の数の少ないのがシンプルなのだろうか。
部品点数の少なさがシンプルであることに直接結びつくのだろうか。
ここで考えるべきは、素子の数といった視覚的なことではなく、
アンプとしての動作について、である。
さらにいえば、それぞれの部品の動作について、もである。
少なくともアンプについてシンプルということは、
目的を実現するための動作がシンプルであれば、そのために素子数が増えても、
そのアンプはシンプルということになる。
トーンコントロールやフィルターといったファンクションを削ったアンプが、
素子数をできる限り減らしたアンプが、
シンプルとは限らない。