オーディオの楽しみ方(つくる・その10)
自作のレベルはさまざまだ。
キットを購入して組み立てるのも自作であるし、
自分で設計し、部品を集めて加工して組み上げるのも自作である。
部品を買ってきて(集めて)、組み上げることを自作とすれば、
カートリッジをヘッドシェルに取りつけるのも、自作の第一歩だと考えている。
スピーカーのキットを組み立てるのと、
カートリッジをヘッドシェルに取りつけて、リード線をつなぐのは、
基本的に同じことと私は捉えているし、自作の基本でもある。
こんなことを書くのは、
インターネットのオークションやSNSなどで、
オーディオマニアのカートリッジの写真を目にする機会が増えたからである。
単売されていたヘッドシェルには取りつけネジが付属していた。
長さは一種類ではなく、三種類ぐらいは最低でもあった。
オーディオクラフトはBS5という真鍮製のネジとナットを製品として出していた。
そのころヘッドシェルの付属ネジは大半がアルミだった。
アルミと真鍮で音が同じならば、わざわざBS5を買う必要はないわけだが、
音は変る。だからBS5を買うわけだ。
BS5は長さの違う七種類のネジが入っていた。
花村圭晟氏が社長だったころのオーディオクラフトらしいアクセサリーである。
ヘッドシェルによってはネジが貫通するタイプがある。
この手のヘッドシェルだと、使い手の性格の一面が出る、と昔から思っている。
ネジの長さに無頓着な人が、意外に多い。
ネジ貫通型のヘッドシェルの場合、ナットを当然使うから、長すぎても取りつけられる。
けれどナットからネジがはみ出す部分が長すぎる。
なぜもっと短いネジを使わない(選ばない)のかと、その度思う。
ナットからネジがほんの少しだけ出ていればいいのに……、と思う。
見た目が悪いだけではない、
ナットからはみ出したネジは共振体でもある。
私がカートリッジの取りつけが自作の基本というのは、ここにある。
適切な長さのネジを選ぶことができないのならば、自作には向かない。